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武道の本質は争いを封じる

武道の本質は争いを封じる

前号で書きましたように武道の本質は争いを封じることです。もちろん、やむを得ず争いが起きる事もありますので、闘うための術、戦闘術・格闘術を習得することも必要といえます。戦闘術を主として稽古する道場も多くあると思います。
杉原道場では、争いを起こさない、または防ぐことが何よりも最高の術と捉えていますから「日常の姿勢」こそが最も大切な術であると教えています。
礼節を重んじ、心のあり方を追求し、勝敗を越えた価値観を身につける理由はまさにここにあります。相手を倒す事が稽古の主目的では礼節と矛盾してしまいます。
不思議なことに心身の姿勢を主として稽古していますと相手に対する術もかえって強くなっていきます。これはまさに目から鱗の現象です。
まず日頃の稽古では、子供たちに「ほほ笑み」を教えています。口に割り箸を横にくわえたようにして頬をあげます。これを何回か繰り返した後30 秒ほど維持します。もし、自然な「ほほ笑み」を絶やさない顔をつくれれば、それで武術は80%は完成だとも教えています。なぜならその顔は、無用な争いを防ぐ事ができるからです。

武道における言葉の重要性

さて稽古で中心的に指導しますのは言葉の大切さです。武道において「言葉」は最も重視されるものですが、それは言葉の使い方で自身の姿勢が影響され「技」が変化してしまうからです。
例えば相手を「倒す」・「押さえる」・「封じる」などの、どの言葉を使うかで一見同じ動作が全く違う「技」となってしまいます。
相手の言葉や態度で心が動かされない「不動心」であればよいのですが、実際は相手の言葉どころか自分の発した言葉にすら心が動いてしまいます。口には発せずとも、心で思ったり考えたりすことも言葉ですから自分自身への影響力は計りしれません。
言葉の使い方しだいで心のありようや身体の動き(表情や行動)が変わってしまうことになりますので、可能な限り心が安定し身体がスムーズに動く言葉を選択したいものです。

「対立的な言葉」によるもろさ

相手と向きあったとき、「勝ってやる」「なめられるな」「倒してやる」 などの「対立的な言葉」を使うと心は力んで緊張し揺れた状態になります。
相手の反発・抵抗に対して、さらに「ふざけるな」「頭にきた」「うざい」などの言葉を発すればますます揺れがひどくなり悪循環の連鎖になります。
心の不安は、同様に身体を緊張し居着かせます。居着くとは、固まって動けない状態の事をいいます。これが日常であればストレス状態ともいえます。
この居着いた状態ではバランス感覚や柔軟性は乏しく、本人の思惑(相手より勝りたい)とは裏腹に不安定で弱い状態になります。
たまたま相手も居着いていれば、居着いた者同士がぶつかる単なる力勝負になり、その場で口・体力・人数・立場などが上ないしは多いほうが勝つだけです。むしろ心に良心的ブレーキのない方が強かったりします。
居着い状態では相手に影響(力を行使)していると自分が勝手に思い込んでいるだけで、実はほとんど力(自分の思い)は伝わっていませんから、居着いていない人、すなわち心穏やかで姿勢の崩れていない人には全くおよびません。怒っている人が強そうにみえるのは誤った固定観念といえます。
結局、思うことも含めて「自分の言葉」で自分を不安定に追い込み、相手の対立的言葉や態度にも反応し、決して望まない状態に自分自身で追い込んでしまった事になりますので言葉は重要です。
人生には様々な「場」があり、その場に適切な言葉を使うためには、経験だけでなく本質的な言葉を学ぶ事が重要になります。
では、武術を通して言葉の影響を検証しましょう。

武術での検証

稽古をしますと、この居着いた状態(対立心)では何の技も決まらず力まない冷静な相手にいとも簡単にやられてしまう事がわかります。
互いに両肩をもって崩し合いをする稽古で、より簡単に検証できます。
片側は、相手の肩を力を込めて持ち(居着いた状態)、もう一方は相手の服を軽く親指と人差し指でつまみます(穏やかな状態)。武術を知らない方には不思議でしょうが、軽くもっている方が簡単に相手を崩してしまいます。
このことを通して居着くことがいかにもろいかを学びます。そして言葉の体得に繋がることが稽古の目的です。
人は幼い状態におきましては、相手の対抗に対して無意識に「対立心」がおきます。武術では「無意識反射」といいますが、この「対立心」がやっかいで、武術の稽古をしていてもこの幼い心がいつも顔を出します。相手が力を込めれば自分も力み、相手が威嚇すればこちらもにらみ返すといった無用の対立的反射がたえません。
しかし、人は成長することが大切です。ましてや子供の成長は宝物です。「対立心」を「尊敬する心」に、「威張る心」を「謙虚な心」に変えていかなければなりません。あきらめてはいけないのは、相手を倒す事や勝ることではなく、自分自身の成長であることを大切に教えたいと考えています。
武道の稽古を通して、「威張る・威嚇する・力を込める・弾く」などは弱く、実は「やさしく・ていねいに・そっと繋がる」ことが強い事だと学んでほしいと願っています。

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